結びなおし
主人がまだ生きていた頃。
一緒に街を歩いていた子どもが
あるお店の看板を見て
「あそこのお店、ちょっと気になる。」
とつぶやき、
ふたりで近づいて見てみた。
そこは
日本の伝統技術をアレンジして作る
アクセサリー
~主には婚約・結婚指輪を売るお店だった。
美術品を眺めるように
ショーケースの品々を見せていただき
「もう、わたしには必要のないものだけど、
いつか子どもにご縁があれば、その時は寄せて
もらいますね。」
とその場を立ち去った。
主人が亡くなって間もなくして
ふとあのお店を思い出した。
(そうだ!)と思い立ち、
わたし達の指輪のリフォームを依頼した。
主人の指の形に変形した指輪。
これはこれでいとおしく
なくしてしまうのに躊躇いもあったが
ふたりの指輪は並べて写真におさめ、
わたしは
主人とわたしの指輪を溶かして合わせ
ひとつの新しい指輪に作り替えてもらった。
手の大きなわたしの指には
さほどの違和感はないけれど、
女性用の結婚指輪にしては
幅広目の
存在感のあるものを選び
内側に
主人の亡くなった日付と
&でつないだふたりのイニシャルを
刻印してもらった。
左手くすり指にある指輪に
ときおり触れ、
会えなくなってしまったけれど
いまもなお
わたし達はつながっていることを確かめる。