「〇〇ちゃん(夫愛称)は、わたしの歩く打出の小槌だよね。」
「もう何も出ぇへんで。出しすぎたわ。」
亡くなる2日前の、いつもの夫婦の会話。
出会ってから25年余りの間に
主人はわたしに物心両面、
ありとあらゆるものを与えてくれた。
わたしはほんとうに満たされていて、
こころの底から(幸せだなぁ)
って思ってた。
そしてあの日。
わたしのこころは打ちのめされた。
言葉では表せない
体験者でなければわかりようのない
深い深い悲しみと淋しさと絶望との
日々が始まった。
わたしは
できれば知りたくなかった『これ』を
知ってしまった。
知らずにいたかった。
でも…
『これ』は
わたしの内側を暗く深く静かに彩る
この上ない悲しい色。
わたしは
いつかどこかで誰かに
(その色知ってるよ)
って、寄り添える人になってしまった。
悲しいけれどまたひとつ
わたしは豊かになったのかもしれない。
『これ』が主人からの
最後の贈りものだったのでしょう。