呪文
「しゃーないやん」
今さら言ってもどうしようもないことを
グズグズ言うわたしに
主人がよく投げかけていた言葉。
「仕方がないよね…」
主人が亡くなって、
何度こう呟いたことだろう。
『死』という
わたし達の意志とは関係なく
自然というか
宇宙というか…
なにかしら
大きな大きな力で以て
為されたこの別れに対して、
自分に
諦念を受け容れさせるための言葉。
あの形あの声の主人と
生きてこの世で会う可能性は
0(ゼロ)だという絶望と
この『心底寂しい』気持ちとが
あの日以来の
わたしを形作る部品となり、
わたしはあの日以前とは違う
新しいわたしとなって、
「しゃーないね」と
このわたしを受け容れて
残りの人生を生きている。